>> P.10
歴史に学び、サステナビリティを追求する「決意」2050年カーボンニュートラル、循環型社会の実現が叫ばれる中、お客様のニーズは「リサイクル材を用いた製品」へと変化しています。安く大量に作り、湯水のごとく使って、要らなくなったら捨てるという消費の時代を、ついに根本から見直す時が来ました。当社グループが手掛ける樹脂製品の大半は石油由来であり、いつまでもバージン原料を使った生産活動に頼り続けるわけにはいきません。100年前を振り返ってみると、当社の発祥である瀧川セルロイド工業所は、もともとセルロイドの再製事業を行っていました。再製セルロイドとは、セルロイド生地を加工する際に出る端材を原料として、再び生地に仕立て上げたもの。新製生地と全く遜色ない仕上がりが高く評価され、業容拡大のきっかけになったと伝え聞いています。当社の黎明期にサステナビリティの思想が存在していたことへの驚きと誇らしさを感じています。同時に、この思想が現在まで脈々と当社に生き続けており、我々の事業活動の根幹となっています。リサイクルというテーマは一筋縄ではいかない難しさがあり、材料調達の面、コンパウンドや成形技術の改良にあたって大変な胆力が要るのですが、あらためて過去の取り組みに学び、知恵を絞って難局に立ち向かっていきたいと思います。社会の中でタキロンシーアイグループが果たすべき使命を、社員の皆さんとともに再確認しました。リサイクル事業の事業性、必要資金、人材の配置・育成を含めて課題は多いですが、その分、非常にやりがいのあるテーマです。樹脂のリサイクル・アップサイクルで、資源循環の仕組みを作る中計「CX2023」では6つの重点実施項目を掲げています。特に「社会課題の解決」と「新事業・新製品・新技術の獲得」は、将来のありたい姿の実現に向けたエンジンとなります。2021年度は、環境負荷低減・循環型社会に貢献する技術の開発に着手しました。新組織である循環適応型素材事業推進部を中心に、新たな種まきと事業化の準備を進めています。循環適応型素材事業推進部では、まずはプラスチックリサイクルの仕組みを作ることに注力しています。自社製造工程で発生するロス材「プレインダストリー材」を、他工場製品に転用するリサイクル方法や、お客様に納品した後、消費者の手に渡る前に発生する加工ロス材「プレコンシューマ材」を回収しリユースする方法など、上流から下流までくまなく見渡して資源循環の可能性を探っています。さらに、最も重要な「樹脂のアップサイクル(創造的再利用)」、すなわちロス材を資源として捉え、処方設計やアロイ(改質)等によって付加価値の高い樹脂に生まれ変わらせる技術の開発にも、本格的に乗り出しました。2021年3月、樹脂コンパウンドの処方設計技術を持つマーベリックパートナーズ社に出資し、環境配慮型樹脂の品質向上に取り組んでいるほか、2022年2月には、樹脂の補強材として用いるパラミロンナノファイバー(PNF)の安定生産を計画するユーグリード社への出資も行いました。従来、補強材としてセルロースナノファイバー(CNF)の研究が世界的に進んできましたが、ミドリムシ由来のナノファイバーであるPNFはこれと同等以上の性能を有しており、かつ、安定した生産方式の確立も期待できます。今まさに、グループ会社やパートナー企業と一体となって、環境配慮型樹脂の実用化に向けて全力で取り組んでいますが、開発が進展し利益に結実するまでには、もう少し時間が必要です。安定品質・安定調達をお約束し市場に根付かせることこそ、私たち加工メーカーが果たすべき役割です。今は性急に結果を追うことはせず、まずは建築資材、環境資材、高機能材、機能フィルムの全ての事業分野で技術・製品のレベルを高め、マーケティングの精度を上げながら確実に進めていく考えです。9タキロンシーアイグループ統合報告書2022