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成長投資を見据えた堅実なキャッシュフロー・マネジメント「社会課題の解決」と「新事業・新製品・新技術の獲得」は、まさに自社と社会のサステナビリティを目指す施策です。中計では成長原資として330億円の投資枠を設定し、うち300億円を新規事業や環境・社会課題解決に取り組むための投資に充てます。2021年度の事業・環境投資実績は23.4億円に留まっており、まだまだ余力があります。もちろん、新規投資にあたっては利益規模や投資回収、資産効率といった厳正な定量・定性基準を設けており、基準に満たない場合は進退を検討しますが、常に複数の種を仕込んでおき、積極的に新たな芽を育成していきます。また、2021年度の研究開発費は対2020年度比で0.8億円上昇し、売上高比率0.9%となりました。さらなる研究開発機能の強化に向けて、2023年度には2.0%以上の拠出となるよう経営資源を投入していきます。機能面では2022年4月に発足した研究開発本部のもとに知財部を配置して、研究開発段階からの知財情報の活用、知財ポートフォリオの形成等の積極的な取り組みを実施していきます。サステナビリティ関連市場は今後ますます拡大し、タキロンシーアイグループの成長ドライバーになっていくと私は確信しています。これら成長投資を継続する体力を十分に確保するため、財務指標としてフリー・キャッシュフローを重視しています。3年ぶりに増収増益に転じた2021年度は、営業キャッシュフローが過去最高の119.4億円、フリー・キャッシュフローも前年度比203.5%の44.2億円となり、コロナ前の成長基調へと戻りつつある手応えがあります。引き続き、事業の選択と集中によって資産効率を高め、グループ横断的なキャッシュフロー・マネジメントに注力し、戦略投資を機動的に実行していきます。P.67「攻め」と「守り」の両面から、経営基盤整備成長戦略を加速させるため、グループ全組織を挙げた支援体制の構築に優先的に取り組んでいます。前中計のKPIが未達に終わったことへの反省から立ち上げた中計・マテリアリティ管理委員会では、月に一度、中計の進捗を分析しテーマごとに課題を確認するほか、取締役会でもKPIのレビューを行い、重点実施項目の「必達」に向けた綿密なモニタリングを徹底しています。また、ありたい姿を実現するうえで最先端技術の活用は欠かせない視点です。中計「CX2023」では重要実施項目に「デジタルの実装」を設定しており、2021年10月に発足したDX戦略推進部では、既存の価値観にとらわれないデジタル活用を目指してテーマ抽出を行っています。DX戦略は、実現したい将来像をクリアにして、段階を踏んで形にしていくことが肝要です。まずは経営データや受発注データにアクセスしやすい環境を整備し、次に在庫管理の将来予測を目指し、その先にビッグデータを活用した新しいビジネスモデルを構想する、といったように、レベル感の異なるゴールが混然一体となっている状態を整理して、どこにデジタルの力を適用するのか、最適解を見極めていく必要があります。ここ1年間の活動を経て、戦略管理、生産、営業、研究開発などの業務機能別にDXを推進する体制が整いましたので、業務効率のアップやお客様への付加価値向上に資するデジタル戦略の企画立案を進めていきます。中長期視点で企業価値を正当に評価いただくため、社外役員の皆様にも深くコミットしてもらいながら、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいます。特に2021年に発足したガバナンス委員会では、社外取締役を中心とした透明性のある仕組みの下、親会社との利益相反取引審査をはじめ、コーポレートガバナンス・コードに沿った体制の整備や、未来の企業価値向上のために必要な制度の検討と審議を重ねています。当社の社外役員には多様なスキルと豊富な知見を背景に、会議でも様々な視点から率直に発言いただいており、非常に活発な議論ができています。引き続きガバナンスの透明性と実効性を高めるための施策を強化し、ステークホルダーの皆様からの信頼感を高めていきたいと思います。P.4711タキロンシーアイグループ統合報告書2022