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分かりました。引き続き適切な連携を図ることで、双方の企業価値の向上に繋げていくことができると考えます。このように設定したルールや収集した情報に基づいて審議対象取引を抽出・精査した結果、当社の少数株主利益保護の観点から不合理な点は認められず、取引に問題はないことが確認できました。ルールについては、今後、審議の実績を積む中でその妥当性を確認し、適宜見直していくものと考えています。貝出親会社との連携については、私も最近のキャリアの中でじっくりと考えていました。今年6月に当社の社外取締役に着任する前、三井化学グループの中核事業会社で経営に従事していたのですが、「親会社とどうやって“共存共栄”の関係を築いていくか」が大きなテーマでした。そこで出した解は、グループとしての新規事業探索に貢献し、確実に利益を出して親会社へのリターンを確保するのが事業会社の役割であるということ。加えて、親会社の経営リソースをしっかり使わせてもらい、貪欲に自社の成長に繋げていくことも非常に重要だ、ということです。伊藤忠グループの最大の強みはグローバルネットワーク。当社が海外の成長事業を強化するにあたっては、非常に強力なサポーターになってくれるのではないかと期待します。また、例えばバイオプラスチックを用いた環境配慮型製品の製造・販売にあたっては、原料の調達や販路の拡大で連携を図っていくことができるでしょう。このような取り組みにより、結果的に当社の少数株主にも確実にリターンを出せるよう、親会社をうまく「活用する」したたかさも必要だと思います。荒木私は、昨年度は取締役会で報告を受けていた側でした。支配株主との継続的な取引に関する調査について、一般的なガイドラインが示されているわけではありません。ゼロから作り上げるのは大変骨が折れる作業だったと思いますが、ご報告いただいた内容は非常に整理されており明解でした。今後の議論に向けて、大きな指標ができたと思います。的確な経営判断を下すには、定量評価が欠かせません。私の専門である会計は、ステークホルダーの利害について数字を通じて調整する機能を持っており、ガバナンスの一つのツールであるとも言えます。私は2022年度から委員として参画していますが、特定の利害関係者に偏らない「フェアネス」や、企業価値を定量的に評価する「バリュエーション」と向き合ってきたキャリアを活かし、親子上場のメリットを十分に活かせているか、客観的に判断するための仕組みの整備に貢献していきたいと思っています。Q3.「取締役会の実効性評価」に関する取り組みの成果と、今後の課題について教えてください。羽多野これまでは、全取締役・監査役の自己評価アンケート結果をもとに取締役会で議論し、次年度の取り組みに活かしていましたが、PDCAを回す仕組みが十分に整っていないという課題がありました。そこで、アンケート結果を受けた取締役会での議論の後、ガバナンス委員会で1年間の活動総括と次年度の重点課題の抽出を行い、その内容を取締役会に答申するというプロセスを導入しました。これにより今後の課題がよりクリアになり、実効性評価のプロセスが改善したと感じています。PICKUP|事務局(サステナビリティ戦略部)からのコメントガバナンス委員会の指揮の下、財務経理部、購買部などの関係部門から伊藤忠グループとの前年度1年間の取引記録を全て抽出することから検証がスタートしました。基礎情報を分析し、カテゴリー分けを実施することにより、委員会における利益相反取引の円滑な審議に寄与したのであれば何よりです。明確な基準を設けていただいたので、2年目からは効率的に、かつ精度高くチェックできる仕組みが整いました。ガバナンスや環境などサステナビリティに関するあらゆるテーマについて、社外とのコミュニケーションを深めていくことも当部のミッションです。委員の皆様からのご示唆を受けながら、ステークホルダーとの質の高い対話を進めていきます。57タキロンシーアイグループ統合報告書2022